2025年2月5日水曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 103

「すごく混んでますね……入れると思ったんですけど……」
 
あすぴょんさんは、どうして入れると思ったのだろう。休日のターミナル駅のファミレス。しかもサイゼリヤ。リーズナブルな価格で美味しい料理を提供してくれるサイゼリヤは、ファミレス人気一位と聞く。そんなランチ時の人気店に、誰がどう考えても、すんなり入れるわけがない。
 

「……とりあえず、一応ウェイティングリストに名前を書いておきましょうか」
「一応……?」
「待ちながらこの後どうするか決めるのはどうでしょう?かなり混んでいるので、このまま待つのも大変かなと思うのですが……」 
「いえ、私は全然待ってる感じで大丈夫です」

マジかよ。頭の片隅で次のお店の候補を考えていた僕は、このまま待つと腹を括ったあすぴょんさんに動揺した。ウェイティングリストを確認すると、15組以上のお客さんが待っている。混雑時は二時間制と決まっているとはいえ、僕たちの前に15組が立ちはだかっているのだ。入店するのに何時間かかるのだろう。気が遠くなりそうだった。
 
「ホピ沢さん、ウェイティングリストに名前書いておきましたよ。私こういう時、推しの名前を書くようにしてるんです」
 
どうやらあすぴょんさんは推しの苗字を書いたらしい。ちらっと見ると、確かに珍しい苗字が書かれてあった。確かマッチングアプリで会ったサリーさんも、予約時には推しの名前を使うと言っていた。そういうのが流行っているのかもしれない。
 
「あすぴょんさんはサイゼリヤがお好きなんですか?」
「大好きです!……もしかしてどうしてこんなに混んでいるのに、サイゼリヤにこだわるんだろうって思いました?思いますよね、ごめんなさい」
「いえ、謝ることじゃないです。すごくサイゼリヤが好きなんだなと感じました」 
「大好きっていうか……とにかく安いですから。あと私、あんまり知らないお店に行くのがちょっと苦手なんです。絶対に美味しいってわかるならいいんですけど……。せっかくお金を出しているのに、美味しくないお店だったら悲しくなるじゃないですか。最近はすごく高いし」
「確かに確実に美味しいと嬉しいですが……。僕はそれを発見するのが、外食の醍醐味かなと思ってました」 
「多分それはホピ沢さんが、外食好きでグルメ通だからだと思います。私は全然グルメじゃないし、結局食べ物って胃に入れば全部同じじゃないですか。それなら別に高級で雰囲気がいいレストランじゃなくて、ファミレスでいいかなって」
「……」
「だからちょっとくらい混んでいても、全然待ちます。苦じゃないです。むしろファミレス以外だと緊張するのでつらいです
 
胃に入れば全部同じ……か。
 
僕はあすぴょんさんに、同意できなかった。色々な考えがあるだろう、ファミレス一択なのは構わない。しかし確か食べるの好きってプロフィールに書いてなかったか?それなのに胃に入れば全部同じ?食べることが好きな人の思考とは、とても思えなかった。
 
僕が女性に求めることの一つは、食事。一緒に飲食店を巡ったり、美味しいものを二人で楽しんだり、美味しいと思う気持ちを共有したい。お酒が飲めなくても問題ないが、食べることが好きで、食べることに好奇心旺盛で、食べることに貪欲な方だと嬉しい。僕自身が食べることが好きだから。
 
あすぴょんさんとは、一緒に食事を楽しめないかもしれない。サイゼリヤの店前で順番を待っている僕の心の中は、もやもやでいっぱいだった。

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