マッチングアプリを通して二人の女性に会えたという経験をしたことで、いつの間にか僕は調子に乗ってしまい、勘違い野郎に成り下がっていた。"自分からメッセージを送った相手からは、必ず返信が来る"。そう信じて疑わない、恥ずかしい自分になっていた。そんな馬鹿野郎な自分に気づいて心を改めた矢先、二人の女性が僕に興味を持ったとメッセージをくれた。
一人目の女性は、都内で教員をしている41歳RINANANさん。仕事着で撮影したと思われる写真は、どこかの公園の花壇をバックに、パンツスーツに眼鏡、黒髪ロングヘアを後ろでまとめたスタイル。教育現場で勤務という仕事柄かもしれないが、絵に描いたような真面目でお堅い印象だった。その写真が、一枚だけ。写真は複数載せられるのに、何故この一枚なのだろう。婚活は少しでも自分の姿をよく見せようとするだけに、RINANANさんのプライベートが垣間見える写真を載せないのが、不思議だった。
RINANANのプロフィール欄には、"美味しいものと料理が好きです。美味しいものを一緒に食べて、喜び合える人と仲良くなりたい" 、と書かれてあった。
僕も食べることが大好きだし、パートナーとは美味しいものを共有したいと考えている。そもそも僕が結婚相手に求めることの一つが、食べることが好きな方だ。もしかしたらRINANANさんと楽しく食事ができるかもしれない、と思った瞬間、僕はとある一文を読んで咄嗟に身構えてしまった。
"一年以内に結婚できる高収入なイケメンを探しています。物価高なので、最低でも年収は600万円あると嬉しいです。また困ったことに、超がつくほどの特殊な面食いです。難易度高いと思われます。ストレス解消はパンやピザを焼くことです。パニック障害があるので、理解してくれる方を望んでます"
えっ……と……?