2024年10月21日月曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 61

サリーさんは最大限に、僕を褒めてくれたつもりなのだろう。人様の前で絶対に言うべきことではない胸の内を曝け出してでも、僕を評価してくれたことは感謝する。しかし……背が低い僕にとっては、あまりに辛辣な言葉のオンパレードだった。背が低い男性は卑屈で性格が悪い……のか。お酒に呑まれたサリーさんに対して、怒りや苛立ちは沸かない。しかし酔っ払ったサリーさんから放たれる悪口は、確かに僕に突き刺さった。
 
 
「そろそろお店、出ましょうか。サリーさん、大丈夫ですか?」 
 
早く家に帰りたい。

真っ先に僕の心に浮かんだのは、負の感情ではなく帰宅願望だった。「まだ飲みましょう」とテーブルにへばりつくサリーさんを宥めながら、半ば強引にお開きにする。店員さんから伝票をもらうと、サリーさんはあっけらかんと言った。
 
「今日はごちそうさまでした」 

……サリー、おまえもか。
 
タケウチさんに続いてサリーさんも、最初から僕が払うものだという態度を見せた。確かに僕は全額支払うつもりだったが、普通は!普通は、お会計の相談や財布を出す素振りをするものではないのか?例え支払う意思がなくても!酔っ払っているサリーさんの意識がどこまではっきりしているのかわからなかったが、この時は素面を疑った
 
しかしサリーさんは、千鳥足なのだ。 
 
「楽しかったですね〜」
「サリーさん、大丈夫ですか?」
 
新大久保駅までの道中、サリーさんはどこかに飛んでいきそうな足取りで、ふわふわと歩いていた。いや歩いていると言っても、酔っ払いの歩幅は当てにならない。通行人とぶつかりそうになりながら、サリーさんはよろよろしていた。後々誤解を招きたくない僕は、サリーさんには触れないように、彼女をガードしながら付き添った。
 
不思議だった。今日初めて会った人の介抱をしている。僕は何をやっているんだろう。
 
そう思った矢先、サリーさんに異変を感じた。
 
「……ちょっと気持ち悪いです」 

サリーさんは、その場にしゃがみ込んだ。
 
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