2024年10月15日火曜日

40代男がマッチングアプリをやってみた 59

少しでも自分をよく見せたいと思うはずの出会いの場で、仕事の愚痴を全力でぶちまけるなんて、酔っていないとできない言動だろう。
 

ホピ沢さんは、好きなことを仕事にしてるんですよね?毎日保護者に頭下げて、安月給でお給料も全然上がらない私の気持ちなんて、どうせわからないですよ」
 
酔っ払いの戯言は、聞き流すに限る。延々と湧き出てくるサリーさんのストレスを、僕は淡々と相槌を打ってやり過ごした。
 
サリーさんの不平不満は、職場のことだけでない。実家、両親親戚についての悩みも、爆発した。

「結婚していない私は、とにかく肩身が狭くて。実家に帰れば両親から、"どうして結婚できないの?"とブチギレられるし、親戚には哀れな目で見られるし、見下されるし。結婚していないだけで、無能っていうレッテルを貼られるんです。祖母には、"いつまで一人でいるの。あなたが我儘だから結婚できないのね"って、泣かれるし。私だって結婚できるんだったら、既にしてますよ。でも、できないんです……」
 
このサリーさんの苦しみは、痛いほどわかる。僕も両親や親戚に、同じことを何度も何度も言われてきた。滅多に会わない親戚から面と向かって、"独り身は身勝手で未熟で幼くて信用できない"と、はっきり言われたこともある。両親は今年40歳を迎えた僕に諦めがついたのか、だいぶトーンダウンしたものの、それでもふとした時に、"結婚に対する気持ちや頑張りが足りない。守るものもなく、自分のためだけに生きるのは、惨めだよ"と、叱責される。
 
惨めだろうとなんだろうと、こっちだって毎日必死に足掻いて生きている。結婚していないだけで、何もかもがダメと評価されるのは……正直つらい。お酒に呑まれたサリーさんのぼやきを見苦しいと思いつつ、この件には心から同調した。
 
しつこくお水を勧める僕に観念したのか、ようやくサリーさんはマッコリカップではなく、お水が入ったグラスを持った。そしてそれをごくごく飲んだ後、サリーさんはふにゃりと笑った。
 
「今日ホピ沢さんと会ってみて、本当によかったです。実は、ギリギリまで会うのやめようかなって思ってました」
 
ん?
 
自分から誘っておいてアレですが、ドタキャンするつもりでした。でも友達に強く説得されたので、勇気を出してみました
 
ん……?

「実は私、身長が低い男性が無理なんです」
 
ん……ん?!
 
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